インスピレーションが湧いて曲を書こう、となったとします。そのときに一番はじめにすることは、もちろん今頭に鳴っているものを急いで五線に書き付けることです。三十秒ぐらい頭に鳴っているインスピレーションだったとしても、五線に書いている間にイメージはどんどん変形していきますし、書いている内になくなることも。
いったん書き終わった楽譜を見て、そこからイメージをさらに膨らまそうとしたとき。さらにイメージが膨らむ場合と、まったく何も思いつかない場合があるのです。 イメージが膨らむときは簡単、筆の進むままとにかく書く。書き終わったところで見返し、構成をたてて、さらに書き進める。構成作業と書きましたが、このような一種躁状態にあるとき構成作業などほとんど必要なく、一気に書き終えることが出来ます。それが良い曲かどうかは別の話ですけれど。 イメージが湧かないとき。いつもこの状態なのですが、どうにかして書き進めようと努力します。
雀の涙程度しか湧かないインスピレーション。たった二小節、四小節で止まってしまうことも多々あります。ほとほと途方に暮れてしまうのですが、そこから完成まで持っていけることを僕は知っている。作曲をしたことがない人が見たらあまりに作為的で笑ってしまうだろうけれど、その数小節でどうにかしようと思えばどうにかなってしまうのです。
はじめの数小節。あれこれ想像出来る一番楽しい時でもあり、また力不足でどうにもならないんじゃないかと不安になる状態。 先ほど数小節でも完成にまで持っていけると書きました。故にこの短いスケッチで悶々としてしまうのです。果たしてこの素材は良い素材で、一曲にまとめ上げるに足りるのだろうかと。もちろんそれなりにでっち上げることは出来ます。しかし、それが演奏されるに足りるのかどうかと考えてしまいます。良い素材かどうかの見極めはかなり難しい。悪い素材だと思っていたものでも、まとめてみたら良い曲になることだってあるのですから。逆に良い素材だと思い喜々として書き進めた曲が平凡になることも。
短いスケッチから曲を完成させられるか否か、そこからイメージを膨らませ良い曲にすることが出来るか否か。実のところどういうのが良い素材なのか、よくわかりません。悪いと思っていた素材でも良い曲が出来るところを見ると、ほとんど気の持ちようなのではと思ったりもします。 つまり採用・不採用の間には、作曲をする時のインスピレーションやモチベーションなど感性の部分に深く関わっている気がするのです。加えてその時々の気分とか、体調とか、その他もろもろが関わってようやく完成まで持っていける。もちろん良い素材があれば曲を完成させられる率は高くなります。良い素材は良いインスピレーションを呼びますからね。
数小節で書き終わってしまったスケッチが、段ボール箱いっぱいにあります。それも複数個。スケッチは毎日のように執っていますから書き溜まる一方。手元にあるスケッチは常にどうにかしようと試みていますけれど、一ヶ月かかってもどうにもならないものは残念ですが段ボール行き。その段ボールの中には完成させたら良い曲になるかもしれない、しかし書いている時にはどうしようもなかった、中学時代から書き貯めたたくさんのスケッチが眠っているわけです。
手元にいくつかスケッチがあり、そのうちの一つがメノモソ用の「旋回運動」練習曲。この二週間ほど悩み続けています。僕としては悪くはない気がするのですが、どうにかなりそうな気がしません。スケッチ採用と不採用の見極めが簡単に出来るようになるといいのですが、なかなか上手くいかないものです。
■ @ぴあ
品物を買うときには見極めが必要なのだけれど、手に取って見聞きすることが出来ない映画とかコンサートはどうやって判断すれば良いのでしょうか。人の批評もあまりアテには出来ませんし、その時の心理状態もあるでしょう。 |