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02.12.09 お題日記 「ミニスカポリス」

 空から降る雪で大地は白に覆われる。年月の作った汚れ、排気ガスの黒ずみ、投げ捨てられたタバコ、その他もろもろ全て覆い隠します。気温は零度に近く、吐く息が白く凍り付きそう。両手に感覚はなく、耳は千切れそうで、間断なく体が震えるのです。
 とにかく暖を取り、芯から冷えた体を温めたい。それよりも、この心の寒さをどうにかしたい。真っ白な汚れのない雪の道へ足を踏み出すと、男の足跡がくっきりと付くのです。

 雪が降るのだって珍しいことだ、思いきったことをしてみよう、そうすれば体も心も温まるに違いない。自分の足跡を見て、突如そのような考えが浮かびました。汚れだって雪によって消えるんだ、だったら俺だって汚れても良いじゃないか。汚れたって雪のように消えればいい。

 ドアが開くと同時に人が流れ出て、その流れが収まったところで数人の待合い客と中に入ります。数分もすると凍えていた体も温まり、手にも感覚が戻って来る。二、三度手を開いたり閉じたりして、きちんと動くかどうか確かめ、いよいよ決行しようと強く自分に言い聞かせます。大丈夫、絶対に見つかりっこない。

 不自然な形で手が動く。そう、本来あってはならない動き。男は痴漢を働こうとしているのです。女に手を密着させ、感触を確かめる。女はきっと男を睨み付けるも、素知らぬ顔をして指を動かし続ける。誰も気が付かない、気づいているのは女だけ。これは明らかな犯罪行為で決して許されるものではないのに、女をさわり続けるのです。
 何という厚顔無恥な卑劣感。見つかって社会的に抹殺されても文句は言えまい。それほどのことをしていると知りつつも、男は止めようとしないのです。男の体は冷たかった、しかしそれ以上に心は冷たかったのです。

「そこまでよ」

 唐突に腕を捕まれる男。見つかりっこないと思っていた、いや、思いこんでいたのです。しかし、腕をぐいっと引っ張り上げられると、どうその場を取り繕うかで頭がいっぱいになり、混乱してしまう。
 掴んでいる主を見ると、生足をこれでもかというぐらいに見せつけるようなタイトなミニスカートを履いた婦人警官。

 まずいぞ、どう取り繕ってもこの状況は言い逃れできない。今まで散々女にわいせつな行為を働いていたのですから。がっくりと首をうなだれると、その目線にある足に目が釘付けになってしまう。それに気づいて自分自身が馬鹿に思えてなりません。男の性(さが)、それとも彼自身が異常性欲であるためか。張り裂けそうなぐらい早い鼓動を打ちならす心臓。この場から走って逃げたい、一刻も早く立ち去りたい。しかし、腕を捕まれているために叶わぬことなのです。
 婦人警官に引っ張られて行く。あぁ、もっと暖まりたかった。寒い。これから寒いところに行かねばならないのか。

 数時間前に男は思いました。汚れだって雪によって消えるんだ、だったら俺だって汚れても良いじゃないか。汚れたって雪のように消えればいい。
 だけれど、男はその時には気づきませんでした。真っ白な雪に汚れが付くと、そこだけ異様に目立つことを。俺はなんて馬鹿なんだろう。

 ミニスカートを履いた婦人警官に連れられ外に出ると、男の頭に雪が舞い降ります。それを彼女は降り払いながら、また来てねと白い息を吐きながら言う。

 愛想を振りまき声をかける女は、青いタイトなミニスカートを履いた婦人警官。男が振り返ると、そこに女はすでになく建物に引っ込んでしまった様子。元々女がいた場所には極彩色の看板があり、こう書かれていました。

「イメクラ・ミニスカポリス」

 彼女と喧嘩した寂しさからつい来てしまった風俗。彼女に知れたら、そう思うと必要以上に寒く感じます。後を振り返ってはいけない、自分自身に言い聞かせる。

 空から降る雪で大地は白に覆われる。真っ白な汚れのない雪の道へ足を踏み出すと、男の足跡がくっきりと付いていました。

Web-Happy.com

僕は風俗には行ったこともないし、行くつもりもありません。それに、痴漢行為などもってのほか。ただ、世の男性に風俗に行くなというのは無理な話で、たまった欲求のはけ口が痴漢行為をさせてしまう可能性だってあるやもしれん。だけれど、風俗に行って心が満たされるか、暖かくなるか、というのはまた別な話。ついでに言うと浮気もしませんよ、僕は。度胸も甲斐性もありませんからね。

※  このお題ミニスカポリスは「tの365日の逆襲」suisuiさんから出されました。
※  一参加者としての総論」「参加者への感想」もご覧下さい。


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